これは Pepabo Advent Calendar 2014 の 8日目の記事です。昨日は Ubuntu + Monit + Fluentd 起動の自作 Docker イメージを DockerHub に配置までをやってみた でした。明日は laughk さんです。
今日はペパボのエンジニア評価制度について書きます。
(エンジニアの働き方 | キャリア採用 | 採用情報 | GMOペパボ株式会社)
評価制度そのものの内容は下記の記事が詳しいのですが、
今回はできるだけこれまでにあまり語られてこなかった側面に光を当ててみようかと思います。つまり、
- 社内の一般エンジニア(シニア以上の職位を有していないエンジニア)はこの評価制度をどうみているのか?
- エンジニア評価制度の負の側面
こうした点について、おもいっきり主観で書きます。書く。
優越感と劣等感
さて、エンジニア評価制度については、ランチや飲みの席でも、ちょいちょい話題に上がる。今期はシニアに立候補する / しないとか、アイツは立候補するらしい、たぶん受かるだろう、オレは受かる材料がないからたぶん無理、とか、そんなの。
同僚のあるエンジニアが「評価制度は、エンジニア間に優越感と劣等感をもたらした」と言っていた。僕は、うん、そうだね、と答えた。
一般エンジニアからシニアに上がると何が変わるのか?
一般エンジニアからシニアに上がると何が変わるのかというと、前述の図にもあるように、年俸が変わる。あとフレックス制になる。しかしそれ以上に、周りの見る目が変わる。
エンジニア間では、その人が「デキる」というのはシニアになる前から周知のことだったりするが、シニアになると、それがエンジニア以外の人にも分かりやすくなる。
シニアというのは、シニアにふさわしい実力を持っていて、シニアにふさわしい働きをしている人への追認行為に過ぎないのだけれど、その「バッジ」を有していることで皆に一目置かれるというのは、まああると思う。
そしてシニアは皆に一目置かれることで一種の優越感を持つし、そうでない者は劣等感を抱く、ということも、まああると思う。
(※アドバンスド・シニア以上については生態がよく分かっていないので、このエントリーでは言及しない)
評価制度の導入によって悩みが増えた
僕は、実を言うと、一般エンジニアとシニアの能力の差はそれほど無いような気がしている。思うに、頭の良し悪しの差ではなく、姿勢の差だ。
シニアに必要なのは、大事なことをなあなあにせずに、きちんと向き合って着実にやっていくことと、日常的に自分の腕を磨く習慣を身につけていること。ずば抜けて頭が良いとかそういう意味での特別な才能は要求されていない。
ただし、上の姿勢を身につけるのは容易ではないし、日々の積み重ねの結果として、一般エンジニアとシニアとの間に実力の差はかなりあるので、その意味では特別とも言えなくもないけれど。
いずれにせよ、こういうことを考えているということ自体、僕自身がシニアに対して劣等感や引け目を感じているということだろうと思う。
そして、一方で、シニアの優越感も、期待に対するプレッシャーとセットになっている。「シニアにふさわしい働きぶり」というプレッシャーは相当なものだという声をたまに聞く。
つまり、一般エンジニアにもシニアにも共通していえるのは、評価制度の導入によって悩みが増えたということ。評価制度というものが有ろうが無かろうが、僕たちの悩みは尽きないが、評価制度はそれを加速させたといえる。少なくとも僕の観測範囲では。
それでもずっとマシ
このような実力本位の制度は、自分の弱いところを浮き彫りにしたりして本当に気が滅入るときもある。
しかし、それでも、この悩みはある種自分がコントロールできるタイプのものだ。年功序列の組織にいたときに感じていた「自分ではコントロールできないもの」によって待遇が違うことへのモヤモヤに較べたらずっとずっと健全でマシなものだ。
評価制度はいまのところ成功している
暗い側面もあるので「悩み」という言葉を敢えて使ったが、同じことを別の言い方でいうと「自分の技術や仕事に対するスタンスを見つめ直す機会」が増えた、ともいえる。
そして、その結果、僕や同僚エンジニアの勉強の総量が増えた(ように感じる)。そして、その結果、ペパボのエンジニアの技術力は目に見えるほどグンと底上げされた。そうした意味で評価制度はいまのところ成功しているといってよいと思う。
懸念していること
なんだかこうした書き方だと「お客さん」みたいで、つまり制度を実施する側と受ける側とに完全に分かれているみたいだけど、全くそうは考えていなくて、自分のところの制度なのだから、自分たちで良くしていかないといけないと考えている。
だから制度の改善は常に意識しているのだけれど、実はいま懸念しているのはエンジニア評価制度そのものではなく、評価制度によってエンジニアが成長を加速させてどんどん力を付けていった結果、他の職種との間に力の格差が生まれるのではないかということ。
これは経験したことがない人にはなかなか想像がしづらいかもしれないが、職種間に力の差があり過ぎると、それが一種の身分制度みたいになってしまう。一方が他方の都合や機嫌をうかがい、卑屈になる。機嫌をうかがわれている側もジワジワと脳を蝕まれていって、自然と相手を見下してしまう。個人の感想だけど、職種間の身分制度は、上司・部下みたいな関係よりもずっと悲惨だ(優秀な部下は上司とのパワーバランスをひっくり返すことができるが、身分制度は蔓延する空気みたいなものなので明確に「誰」という相手がいない)
こうなると、もうほんとクソみたいな組織が出来上がってしまうので、なんとか阻止したい。それにはデザイナーやディレクターなどの他の職種にも評価制度を設け、専門職としてのキャリアアップをしていくラインが必要なのかなと考えたりしている。
まとめ
さて、ペパランチョン(ペパボエンジニアとランチをしながら楽しく会話できる制度)の参加者も、評価制度に興味を持たれていた方が多いと聞いています。採用時のミスマッチが起こらないように、敢えて負の側面も赤裸々に書いてみようと意気込んだのですが、いまはうまく運用されているからか、決定的な問題は思いつきませんでした。
上に書いたようにエンジニア全体の底上げに繋がっていると思うし、またエンジニア個人としても、自分が適切に評価されていて働きやすい環境にいると感じています(評価のプロセスと結果がすべてオープンにされているのが良いのだと思う)
ペパボやエンジニア評価制度に興味がある方は、ぜひ下記などをご覧になってください。