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保育園新設の近隣住民への説明責任は、行政と事業者のどちらにあるのか

先日、保育園新設の近隣住民説明会に行ってきた。三行まとめだけ抜粋する。

  • 近隣住民からは、保育園を開設する必要性は分かるけど、なんか市の進め方が気に入らんわー、モヤモヤするわー、という声が多かったよ
  • 住民のモヤモヤに対して、行政と市議会議員が足繁く通って解決したよ、という事例を見つけたよ(テレビの番組の録画)
  • 武蔵野市議会議員のみなさん、活躍のチャンスですよ

そして、これを書いたあとに「保育園新設の近隣住民への説明責任は、行政と事業者のどちらにあるのか」という論点があることを知ったのでメモ。

忙しい現代人のための三行まとめ

  • 保育園を運営するのは事業者なのだから事業者が説明してね、というロジックがあるし、一方で、市の施策として待機児童対策を進めるのだから市がんばれというロジックもあるよ
  • 武蔵野市の認可保育園の事業者の募集要項には「認可保育所設置の提案前に近隣住民との合意を形成しておいてね、そのことは事業者の選定のときに特に重視するよ」という旨が書かれていたよ
  • 「どちらが主体になるほうが、近隣住民との合意が形成され保育園新設の実現可能性が高まるか」という観点からは、市が主体のほうがスムーズに進むと考えているよ
  • 追記)児童福祉法に、市町村が(子育て支援事業に)努めなければならない、とあった

以下、本文です。

行政が説明がんばってという記事

説明をするのは事業者だよという記事

(少なくとも市川市については)説明をするのは事業者だよ、行政ががんばるべきは事業者の審査手続を改善することだよ、という意見。

武蔵野市の認可保育園の事業者の募集要項

どちらの意見も分かるわー、と思いつつ、武蔵野市ではどうなってるのか、一次ソースをあたってみた。

関係する箇所を抜粋すると、

5 その他の条件(筆者注: 認可保育所設置の提案に関するその他の条件)

(3) 近隣住民に対する対応

施設の開設及び運営にあたっては、できる限り提案前に近隣住民との合意を形成すること。また、近隣住民の要望に対しては、誠実に対応すること

(中略)

12 運営予定事業者の選定

(3) 特に重視する事項

近隣への説明が事前に行われ、合意を得ている。

という感じ。

募集要項についての補足

上の募集要項から、認可保育所設置の提案前に近隣住民との合意を形成しておいてね、そのことは事業者の選定のときに特に重視するよという旨は読み取れるが、これは平成28年の時点で武蔵野市はこう考えているということであって、この要項にある考え方が妥当なのか、事業者が説明責任を負うべきかという論点は検討の余地があると思う(妥当でないのならば今後変えていけば良い)

また、上の募集要項は事業者が土地と建物を用意して提案するケースが対象のもの(4 提案条件の (3) イ)に対し、先日行われた説明会の対象は市有地に保育園を新設するものなので、上の募集要項がそのまま当てはまるわけではない。説明会でも「事業者募集要項の作成に活かすので意見ください」という旨の説明があった。

どちらが主体になるのが良いのだろう

保育園を運営するのは事業者なのだから事業者が説明してね、というロジックも分かるし、一方で、市の施策として待機児童対策を進めるのだから市がんばれというロジックも分かる。

どちらのロジックも取り得るのだけれど「どちらが主体になるほうが、近隣住民との合意が形成され保育園新設の実現可能性が高まるか」という観点からは、市が主体のほうかと思う。

先日の説明会でも「説明を事業者任せにするのではなくて、市が主体的にやってくれ」という意見が出ていた。2016年4月の調布市の記事にもそのような旨が書かれており。

ぶっちゃけうまく進むのであればどちらが主体でも全然かまわないというのが本音だけれど、市がリードしていくほうが住民としては安心感が得られる可能性が高いのかなという印象を受けた。

がんばってくださいと言うのは簡単だけど、武蔵野市には ほんとがんばってほしい、応援しています(もちろん事業者の方にも)

追記)児童福祉法について

記事を公開した後に、武蔵野市議会議員の深田貴美子さんの記事を見つけた。

認可保育所」設置義務は、「自治体の責務」と「児童福祉法」に明記されています。子どもの生命をお預かりするのですから当然です。 また、費用面からも、今事業は、施設整備総費用約2億2千万円の内、事業者の負担は4千万円のみ。開園後の年間運営総事業費約1億円の内、9千5百万円は、武蔵野市の市民税です。 一体どこが「民間と民間の問題」なのでしょうか。

児童福祉法の箇所が具体的にどの条文を指しているのか分からなかったけれど、下記あたりだろうか。

児童福祉法 第六款 子育て支援事業

  • 第二十一条の八  市町村は、次条に規定する子育て支援事業に係る福祉サービスその他地域の実情に応じたきめ細かな福祉サービスが積極的に提供され、保護者が、その児童及び保護者の心身の状況、これらの者の置かれている環境その他の状況に応じて、当該児童を養育するために最も適切な支援が総合的に受けられるように、福祉サービスを提供する者又はこれに参画する者の活動の連携及び調整を図るようにすることその他の地域の実情に応じた体制の整備に努めなければならない。
  • 第二十一条の九  市町村は、児童の健全な育成に資するため、その区域内において、放課後児童健全育成事業、子育て短期支援事業、乳児家庭全戸訪問事業、養育支援訪問事業、地域子育て支援拠点事業、一時預かり事業、病児保育事業及び子育て援助活動支援事業並びに次に掲げる事業であつて主務省令で定めるもの(以下「子育て支援事業」という。)が着実に実施されるよう、必要な措置の実施に努めなければならない。
    • 一  児童及びその保護者又はその他の者の居宅において保護者の児童の養育を支援する事業
    • 二  保育所その他の施設において保護者の児童の養育を支援する事業
    • 三  地域の児童の養育に関する各般の問題につき、保護者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行う事業

なるほど、今回の論点でまずあたるべきは児童福祉法の条文だったのか。勉強になった。